1000年続く果樹園から生まれた、果実本来の美味しさを味わえるジャム。
「近鉄沿線の生産者と全国の消費者をつなぐ」をコンセプトに地域商品ブランドを展開するirodori kintetsu(いろどりきんてつ)とのコラボレーションで生まれた、奈良の老舗果樹園 松田果樹園+のジャム。
36代目園主の松田崇史さんに、同園のフルーツ栽培についてや果実本来の美味しさを味わえるジャムへのこだわりを伺いました。
山の辺の道に暮らし、奈良の自然の豊かさを果実づくりに活かす
奈良県天理市萱生町で、松田果樹園+(マツダカジュエン プラス)を営む松田崇史さん。日本最古の道とされる山の辺の道を生活道路とする集落に暮らし、古墳と重なり広がる東京ドーム約2個分の広さの果樹園を、先祖代々管理してきました。果樹園の歴史はおよそ1000年と古く、松田さんで36代を数えます。
「私たちの果樹園は山の西側のなだらかな斜面にあり、朝から夕方までたっぷりと陽光を浴びることができます。午前中の陽光は樹を育て、午後の陽光は果実を甘くします。果物栽培に好適だと昔から知られてきた土地なんです」
特に夕日が素晴らしいと松田さん。茜さす夕日に照らされた果実は、果皮や果肉が美しく色づくことでも知られ、市場関係者から高い評価を受けています。
自然由来の肥料を与え、果樹の免疫力を高める
また松田果樹園+では自然由来の肥料にもこだわりが。安心安全を大切にしたいと、化学肥料は用いず、隣の集落にある養豚場から仕入れた三年発酵の豚ぷんを使用しているのです。
「三年ものなので発酵しきっており匂いがなく、果樹が元気に育つ肥料です。農薬を減らす工夫として、純米を発酵させた黒酢を栄養ドリンク的に与えています。こうして育った果樹は、虫や病気に強い健康な樹に育ちます。」
この夏発売された《素材の味わい みかんのジャム》と《甘さ控えめ八朔のジャム》は、そんな松田果樹園+で育った果実が原料。農園の果実そのものの味を楽しめます。
子どもや若者のフルーツ離れを食い止めたいと加工品に挑戦
松田さんの果樹園では柿、温州みかん、八朔、キウイをメインに栽培。これまでは青果を販売するのみでしたが、加工品に挑戦したいという想いが膨らみ、令和2年7月に加工部門を立ち上げ、
社名を《松田果樹園》から《松田果樹園+》に変更しました。
松田さんが果実の加工に踏み出したのは、若い人たちのフルーツ離れが進んでいることに危機感を抱いたからでした。自身にも息子・娘がいるだけに、特に子どものフルーツ離れに不安を感じるように。「手軽に食べられる菓子が身の回りに溢れている今、皮をむくのが面倒だと感じるのでしょうね。みかんはまだしも、八朔は大人からの需要も低下しています。それならば、手に取りやすい加工品からうちの果実に親しんでもらおうと考えたのです」。
またコロナ禍で一時的に出荷が落ち込み、廃棄せざるを得ない果実に胸を痛めたことも、松田さんが加工品に取り組むモチベーションとなりました。さらに加工部門立ち上げを機に、管理栄養士の資格を持つ奥様も専業で果樹園を手伝うように。松田果樹園+の『+』には、加工部門そして奥様が加わったという意味が込められているのだと、松田さんはくしゃくしゃの笑顔で語ります。
ジャムを通じて果実そのものの味を感じてもらうことで、若い人たちに国産フルーツの美味しさに気づいてもらいたい。そこから国産果物の消費拡大につながれば嬉しい。その想いが、松田さんをジャムを始めとする加工品作りに取り組ませているのです。