アートから生まれる可能性。美味しい、楽しい、をパッケージから伝えたい。
2022.09.09
誰もが活躍できる世界を生み出すアートプロジェクト《Heart for Art.》。irodori kintetsu(いろどりきんてつ)は、この活動の一環として、《たんぽぽの家 アートセンターHANA》とフルーツゼリーのパッケージ開発に取り組みました。果樹園を訪ねることから始まったプロジェクトの全容をお伝えします。
関係者が共にアートをつくる、新しい取り組み

奈良市六条にある《たんぽぽの家》は、アートとケアの視点から多彩なアートプロジェクトを実施している市民団体です。2004年には障害のある人がアートを仕事に活動する《たんぽぽの家 アートセンターHANA》をオープン。障害のある人たちのアートを《エイブル・アート=可能性の芸術》という新しい視座で捉え直し、年間で100件近い展示会やワークショップなどを企画出店。
アート作品は企業とのコラボ商品に活用されるだけでなく、広告やパッケージなどの商業デザイン、保育園の案内表示などの空間デザインにも活用されています。
このように企業とのコラボレーション経験豊富なたんぽぽの家 アートセンターHANAですが、
irodori kintetsuとの取り組みは新しい挑戦だったと、スタッフの小林 大祐さん、アートディレクターの吉永 朋希さんは話します。
小林さん(左)/吉永さん(右)
最初は、開発中のゼリーのパッケージデザインに使うアートやアーティストを紹介してほしいという、よくある依頼だと思っていた小林さん。「でもよくよく話を聞くとそれだけではない。ワークショップでアーティストと交流しながら、パッケージを一緒に作りたいという相談でした。商品にあわせて作品を描き下ろして欲しいという依頼は過去にもありましたが、果実の生産者、加工メーカー、商社、アーティスト、関係者全員が一堂に会してアートを作るというのは私たちにとっても初めての取り組み。とても面白いと可能性を感じ、メンバー選出を吉永に相談しました」
そして選ばれたのが、展示会やワークショップイベント経験が豊富な山村晃弘(やまむらあきひろ)さんと前田考美(まえだなりみ)さんです。
山村さんと作品
前田さんと作品
「山村さんはペンと水彩色鉛筆で描く作風のアーティスト。自身が生活の中で見て面白いと感じたものをモチーフに、細胞を組み合わせたような抽象化した絵を描かれます。また前田さんは、丸・三角・四角を組み合わせた作風が人気のアーティスト。和紙にGペンで線を描き、にじみを計算しながら着色。色へのこだわりも強い方です(吉永さん)」
一体どんなプロジェクトになるのか。たんぽぽの家 アートセンターHANAのメンバーたちはわくわくしてその日を迎えました。
アーティストたちと果樹園の視察へ

プロジェクトは、ゼリーの原料となる果実を提供する《松田果樹園+(マツダカジュエン プラス)》の視察から始まりました。松田果樹園+は奈良県天理市萱生町で1000年続く歴史ある果樹園。irodori kintetsuとはジャムでのコラボレーション実績があり、「普段縁がないアーティストと交流できるなんて面白い」と今回のゼリー開発にも全面的に協力してくれました。

松田果樹園+ 36代目松田崇史さんと、37代目である息子さん
36代目園主の松田崇史さんの案内で、たんぽぽの家 アートセンターHANAのメンバーは、広い園内を軽トラックで移動。果樹園を渡る風、果樹の花の匂いを思い切り感じました。なお今回のフルーツゼリーに使用するのは八朔とキウイですが、萱生町は奈良の名産品である刀根早生柿の発祥の地でもある場所。松田さんに刀根早生柿の原木も見学させてもらい、アーティスト2名はインスピレーションを大いに受けた様子でした。
山村さんは特に、刀根早生柿の原木が印象的だったようで、プロジェクト後もこの木をモチーフとした作品を連作。前田さんと共に、視察時に振る舞われた八朔ジュースの美味しさや軽トラで移動した楽しさを、繰り返し語っています。
みんなの絵をひとつのパッケージデザインに
松田果樹園+の視察に続いて開催されたのが、作画に取り組むワークショップです。果樹園の作業スペースで開かれたこのワークショップには、果樹園の松田夫妻にゼリー加工を担当するメーカーさん、irodori kintetsuのスタッフも参加。松田果樹園+のキウイや八朔をモチーフに作品作りに取り組みました。
アーティストである山村さん、前田さんも、普段は一人で作品に取り組むことが多いため、グループワークはとても刺激になった様子。また参加した関係者メンバーも、山村さん・前田さんの作品作りに刺激され作品作りに熱中。山村さんの線画を他者が着色するなど、山村さん・前田さんの作品の制作過程を追体験することで作品が生まれていきました。この日描かれた作品を集めて1枚の絵にしたのが、パッケージの表デザインです。
またゼリーを抜いたあとに見える内側のパッケージには、前田さんのイラストを使用。「果樹園の風や空気を肌で感じたこととみなさんとのグループワークが、作風にも影響を与えたようです。普段は使わないような色や形が生まれてきたことに僕らも驚きを隠せませんでした(吉永さん)」
今回のワークショップを通じたパッケージ開発に、たんぽぽの家 アートセンターHANAのメンバーたちも、アートの新しい可能性を見出したようです。
作り手との想いとつながりを、消費者に伝えたい
商品に関わる生産者、加工メーカー、商社、アーティストが直接繋がり完成した《irodori kintetsu フルーツコラーゲンゼリー》。このゼリーを通じて作り手たちのコラボレーションの想い、ワークショップでの楽しかった気持ちが伝わり、反対に作品やデザインを通じてゼリーの美味しさや楽しさがさらに伝われば嬉しいと、たんぽぽの家 アートセンターHANAスタッフの小林さん・吉永さんは話します。

多様性を認め人と人がつながり助け合う、ソーシャルインクルージョンな社会の在り方が問われている昨今。irodori kintetsuでは、地域の生産者やアーティストをつなぎ、消費者が作り手の想いや喜びをシェアできるストーリーある地域特産づくりにこれからも挑戦していきます。
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取材先:たんぽぽの家 アートセンターHANA
奈良県奈良市六条西 3-25-4
